昔の女を訪ねてみるような真似をしてみたこと
先日大見栄を切ってみたわりには、裏切られるとかそういったことに、僕はまだまだ免疫が出来ていないのな、と思った。
別に実際昔の女を訪ねたわけではないけれど、まあ、似たようなことをしたわけで、彼女の知らないところから今の彼女の生活をこっそり覗き見たような気分。口の中にじんわり広がる、リゾットの想い出。
先日行った久保田修のコンサート。そこで彼はある曲名について、こんなエピソードを紹介した。
細かい言い回しとかは意訳なんだけど、大体こんな風な解説だったと思う。これを聞いた時、酷く激しく動悸とその苦い水を思い出した。
直訳すると青い溜息という意味なんだけど、例えば、気になる存在の人ができた。ただ、その人には今付き合っている人がいるのかな? いないのかな? 気になってしょうがない。けど結局、あ、いたんだ、ということがわかった瞬間、口の中に、苦い水のようなものが広がりませんか? それが青い溜息なんです。
もちろん、彼の言うような気になる人に恋人がいることを知るというシチュエーションでも青い溜息の覚えはあるのだが、もうひとつ、その苦い水の味を思い出した出来事がある。
その時、僕は友人とリゾットを食べていた。その時付き合っていた子から、携帯にメールが届いた。いつものことだと思い画面を見てみると、別れを切り出す内容だった。その瞬間動悸が高まり、そして苦い水が口中に広がった。30分後にまた電話すると返信し、苦い水に味のそまったリゾットを一生懸命口に運んでみたものの、あまりに苦過ぎて喉が通らない。同席していた友人は、急に苦い顔になった僕を案じ、体調が悪いんじゃないかと気を揉んでくれた。
結局その別れ話を切り出したメールは単なる彼女の冗談だったのだけど、それ以来1度もリゾットを口にしていない。