ハイクとUGCと奇妙なユビキタス感

ハイクにエントリしだしたのは昨年の夏頃だったと思う。時おり丸1日ハイクにかじりついていたこともあったが、この年末年始、一番濃密なハイク生活を送り、初のハイクオフにも参加した。普段はハイクのことをダイアリーに持ち込むことはしたくないのだけど、いろいろ感慨深いことが多かったので、ここにまとめておこうと思う。

UGCとしてのハイク

UGCという単語がどういう意味なのかご存知ない方はキーワードページ等を参照してもらうとして、当初僕はブログやSNSUGCに含まれないと考えていた*1。それは、このブログも含めその大半がチラシの裏的なものであり、堂々と(コンテンツという意味で)UGCを名乗ってよいのは、YouTubeFlickr、pixevといった、バイナリデータを共有するものだという先入観があった*2
ハイクの大半も言葉遊びで占められ、それはそれでチラシの裏的ではあるのだけど、画像を扱うという点においては、ちょっと意味合いが違ってくるのかな、と思う。
ハイクにはフォトライフとの連動ではあるが、画像のポストができる。しかもメールでエントリができ、キーワードで共有、時系列で参照する。これは何かというと、報道、それも生番組に近い。個人であればブログやSNSでも近いことができるが、複数人でしかもここまで手軽に、となると、ハイクぐらいなもんじゃないか。*3
ハイクには、おえかき機能でちょっとしたイラストを書く人も多いが、フォトライフ外からの画像を適宜リサイズして表示する機能がある、というのにも注目したい。自分で絵を描いたり、デジカメで撮ってこなくても、ネット上のあらゆる(大抵はネタとなる)画像をGoogle画像検索で探し当て、ものの数秒で貼付けられる。例え他人様の画像であっても、ツボをつくような画像であればもう、彼彼女は人気者になれる*4。画力や文才がなくても、ある程度の編集力*5だけですら、注目を集めることができる。ここがUGCであって、ブログ/SNSでなく、またバイナリデータ共有サービスでもないところじゃないだろうか。

(当たり前のことだけど)メディアの最先端

印刷が発明され、新聞が発明され、ラジオ、テレビ、インターネットと進化したのと比例して、コンテンツの消費スピードも速まってきたことは、周知のことだろう。
しかし、それにしても、ハイクは、速い。ウケる*6ネタを思いついたら、早速そのキーワードを作成、ユーザーたちはひとしきりそのネタ(キーワード)で言葉遊びを終えたら、また新しいキーワードへ移っていく。はてブもそうだが、イナゴ並みだ。
これの善し悪しは人によって評価が割れるだろう。だが、少なくともそういう現象を生み出すサイトデザインである以上、はてな側はあえてその部分を残していると思われる*7
ただ、僕はこのことを裏返しに見て、同時代性の極地だと考えている。僕が中高生の頃はまさにケータイ第1世代*8で、日がな一日ケータイメールをしていた。当時付き合っていた女の子と、一日の総やりとりが100往復を超えたこともある。だが、中身は「今日の映画なに?*9」とか「ちょ!w ライアン空気嫁*10」と、今のハイクと大して変わらない*11。それが今日振り返ってみれば、現代の*12Web2.0的な視点から言うと、流石21世紀と溜息をつきたくなるほどの先進ぶり。バイナリデータの扱いに対する敷居の低下や、乱立するコンテンツを快適にブラウジングするためのメタ情報という概念、果てはUstreamなどのリアルタイムストリーミングなど、ケータイ第1世代経験者としては隔世の感といっていいほどの充実である。
先述のメディア発達の順序の中で、テレビまでの部分に、少なくとも同時代性というのは、受動的に共有されるものだった。「昨日あのドラマ観た?」で始まる、始業前の会話である。しかし、ハイクを始めとするUGC達には能動的同時代性がある。これは、受動した時点で共有し、また同時に能動に移れるという意味において、現時点で究極の同時代性である。
受動的それと能動的それ。どちらがより人の興味を惹き付けるかは言わずもがなだが、少なくともテレビ離れはそんなところにあるのだろう*13

報道にはまだ勝てないが、エンターテインメントとして君臨する

YouTubeの台頭時、ついに個人は放送局を手に入れた、なんて言いはやされたが、放送局を手に入れても、番組を作るノウハウは手に入れられなかった。いや、手に入れたとしても、それは個人の手に負えるものではない。午前中に起きた事件を取材し、裏を取り、編集し、夕方のニュースに間に合わせるに必要なのは、撮影編集の機材人材とそのノウハウ。これらは個人がどう逆立ちしても、現状得ることはできないだろう。
ただ、締め切りがなく、(小回りの利かない巨大営利企業であるテレビ局を尻目に)巧みなアイデアを駆使した作品、これは十分エンターテインメントとして通用するだろうし、実際している。ねこを鍋に入れたのが巧みなアイデアか、と詰られるかもしれないが、鍋云々以前に、ねこを、ただ時間の許す限り*14眺めていたい、そんなニーズに答えたのが巧みなアイデアだし、そのニーズに答えられなかった放送業界も小回りが利いていなかったという証左だ。
ただ、映像はまだまだ技術面で敷居が高く、万人が手を出して等しくそれなりの注目を集められるわけではない。しかし、それがブログ/SNS級になると敷居がぐっと低くなり、また静止画レベルであればテジカメ、携帯電話カメラの充実により、十分情報として扱える。これを編集、そして告知、共有*15を同時にしてしまうのが、はてなハイクだと言えるだろう。
実はmixiも初期のころしばらく参加していたので知っているが*16、編集、告知、共有に関しては現在のハイクに迫れる機能を持っていた、もしかするとユニークユーザー数が桁違いな分mixiのほうが可能性が高かったかもしれない*17。しかし、ハイクのキーワードに相当する部分、告知と共有に相当する機能が*18存在しなかったので、ハイクのほうがその意味では優れていると言えるだろう。

なんでこんなことを思ったのか

はてなハイク忘年会2008@京都において、貸し切った飲食店にノートPCを持ち込み、プロジェクターでPC画面を映し出し、Ustreamを使って中継をするという試みがなされた。Ustreamを使ったことがある人ならわかるが、放映してる側はカメラに向かって喋ることもできるが、観ている側は基本チャットでコミュニケーションする。つまり、視聴者がリアルタイムで文字情報をおくり、それに対して映像と音声でレスポンスできる。ハイクだから、お絵描きもその場でアップされ、またその絵に対して反応が入る。リアルに酒飲み合っている人たちと、回線の向こうから語りかけてくる人たち。なんなんだ、この垣根が曖昧なユビキタス感。攻殻機動隊が描く電脳の、入り口にまで来ているかのような感覚。
僕はかつて、博報堂から出版されている「広告」誌の1999年7月号において、粉川哲夫による、パソコンと電話回線によるストリーミングラジオの記事を読んだことがある。概要をかいつまんで言えば、VAIO C1をPHSもしくはグレーの公衆電話に接続し、自前で用意したサーバーを介し、RealMedia形式のリアルタイムストリーミング放送を新宿や渋谷の街頭で行った。もちろん記事はその放送後のものなので僕はリアルタイムで視聴することは叶わなかったが、録画ファイルを非リアルタイムストリーミングで観た。痛く感激した。当時の技術は個人*19では技術的にも経済的にも非常にハードルの高いものだったが、それがほぼ10年経った今、自分の目の前に、手に届く技術として降臨したことは、非常に感慨深いものだった。
きっかけがハイクのしかもオフ会で、Ustreamという直接ハイクに関係のないものではあるけれど、僕が今までダラダラ述べ続けてきたことの延長にこのストリーミングで得た奇妙な感覚。これをまず第一歩で支えたのがハイクだったな、と思った2009年年頭だった。

*1:今調べてみたら、含まれるんだね

*2:YouTubeFlickrにもゴミ同然のものも多いが、キーボード打つだけよりは手間ひまかかると思うので、そのあたりの閾値はまだ高いと思う

*3:Twitterとかもできる? tumblrとか、横文字系のサービスは使ったことないんで、もしかしたら出来るヤツとかもあるけど。

*4:あくまで一過性のものだが、彼彼女はおもしろいエントリを書く、あるいはおもしろい画像の引き出しをたくさん持っているという意

*5:ここで言う編集力とは、自分の知識を最大限利用し、自分オリジナルのアウトプットは最小限で効果を発揮するということ

*6:ハイクにおいては、はてなスター、★がたくさんつく、或はたくさんの人が参加、エントリするような、という意味で

*7:もっとも、個人攻撃であるとか、目に余るネガティブな部分が出てきたら別だろうが

*8:ショルダーホン第1世代や、携帯電話第1世代ではない点に注意

*9:お互い洋画の吹き替えが好きだったので、週末の地上波放映が楽しみだった

*10:映画「プライベートライアン」の実況。おそらくエンディング付近と思われる。文体は現代語訳してある

*11:また、二人はチャット厨、メッセ、ICQ厨であったことも付け加えておく

*12:ハイクを筆頭に

*13:テレビがおもしろくなくなったのが先か、ネットがおもしろくなったのが先かは、卵が先かニワトリが先かと同じことなので、そこは空気読んでいただきたい

*14:ダラダラかつニマニマと

*15:テレビで言うところのオンエアに相当

*16:逆に今の機能を知らない

*17:反面、潜在的なトラブルを抱えるわけでもあるが

*18:僕の知っている当時のmixiには

*19:なおかつ中高生の