所詮は朝日、か。
第2次大戦後、日本の武器は世界のどこでも、だれ一人殺していない。それは武器を輸出していないからだ。35万円には代えられない貴重な事実だった。カラシニコフという銃の設計者を追い駆けてロシアなどに飛んでいた話が、日本へと戻ってきた、この回。編集委員の松本仁一さんという方の連載でしたが、上記の箇所を一番言いたかったのではと推察します。
豊和工業は89式を作る前、コルト社からライセンス供与を受け、少数ながら、AR-18というライフルを生産していた。余談ながら、これが89式の開発技術修得に一役買ったらしい。もちろん記事にもある通り、日本は武器輸出をしていない。しかし、IRAの所有している武器の中から、豊和製のAR-18が発見され、騒ぎになったことがある。
できればこれからもそうであって欲しい。
個人的には、武器輸出はせずとも武器の技術供与をしていれば、輸出していないプライドなど最初からあったものではないのだと思うのだが、どうだろうか。
だからといって武器輸出を今からしようとも思わないし、それが自衛隊の装備費用低減につながるとも思わない。何も自前で大量生産せずとも、輸入すればいい話だ。
ただ、小銃ってのは日本人一般にはわかりにくいとは思うが、その国のナショナリズムを反映している部分がある。例えばドイツは最近になって海外派兵を行うようになったが、その頃はまだ小銃が一世代前のもので、7.62mmのものだった。しかし、世界の主流は5.56mmだったため、同時に展開する他の同盟国との補給統一が出来なかった。一部の部隊ではフランスのFA-MASを借りたこともある。さらに、このFA-MASを借りたまま、ドイツの部隊がドイツ国内に凱旋するということになったとき、ドイツ国内では反響が起こった。他国の小銃を装備したまま祖国の土は踏めない、と。そこで急遽そのメンツにかけ、5.56mmの小銃G36を開発している。
儀杖というものがある。例えば海外から貴賓がやってきたりすると、空港等で軍隊が出迎えるアレだ。あれは儀杖隊というもので、小銃を胸の前で縦に持ち、貴賓に敬意を表する。もちろん各国自前の小銃を装備している。先にも出て来たFA-MASはブルパップ式で、全長が短く、儀杖にはあまり適さない。他にもオーストリアやイギリスがブルパップ式を採用しているにも関わらず、儀杖もそれらの小銃を用いている。しかし、日本は89式や64式小銃ではなく、なんと信じられないことにアメリカのM1ガーランドを儀杖に用いているのだ。元々は自衛隊発足当初に米軍から払下げられたM1ガーランドと、旧日本軍から引継いだ99式小銃を制式採用としていたのだが、この時のM1ガーランドが未だ儀杖に使われているようだ。これでは海外からやってきたVIPに、日本はアメリカの属国ですよ、と言っているようなものだと思うのだがどうだろうか。きっとM16を普通に輸入装備するよりも赤裸様に思われるだろうな。
時々「ドイツは日本と違って戦後補償をきちんとやってきた。日本も見倣うべきだ」という声を聞く。しかし、ドイツは日本と違い、大々的に武器輸出を行っている。朝日の連載もカラシニコフは第3世界の銃、みたいな論調だが、AKの次に第3世界で引き合いが強いのは、ベルギーFN社のFALと、ドイツH&K社のG3だということを忘れてはいけない。
日本には軍事関連の話題は一般には出回りにくい。それ故にひとたび大手メディアが生半可な事実だけで記事にしたりすると、ほとんどの大衆は素直に飲み込んでしまうんじゃないだろうか。
武器を作ること、装備すること、輸出すること。そんなに簡単なことではないし、良い悪いと白黒を付けられるものでも無い。