はてな夢日記「受験で出願を忘れつつも試験会場にやってくるというアホな自分。」

寒い。凍えそうな寒さの中を、少しでも暖を求めてテーラードジャケットの襟を立てる。
駅についた僕は、東京行きの新幹線に乗った。その車両はデッキがなく、新幹線としてはありえない、妙に車長の短い16mぐらいの車両だった。隣の席には優香によく似た女子高生が、仏頂面で座っていた。闇の中を、新幹線はすべるように走り出す。車内の光が、窓の外を斜めに横切る雪の粉々だけを映し出す。
少し微睡んでいたのか、いきなりガクんという大きな衝撃で目を覚ました。時間からして、名古屋あたりだろうか。妙に車内が蒸し暑い。周りの乗客達は次々と来ている服を脱ぎはじめ、どんどん薄着になっていく。僕もそれに倣った。
どうも車両の故障のようで、案の定僕達は名古屋郊外で下ろされることになった。この先復旧の見通しは立っていないらしい。振り替え輸送があるから、と駅員の案内についていったら、名鉄のディーゼールカーが停まっていて、とりあえずこれに乗ってくれと言われる。こんなので東京へ行けるのかと思いつつも、すぐに出るからと言われ、脱いでいた上着をあわてて着込み、そのロートル列車に乗り込んだ。
試験会場につくと、そこは試験会場独特の緊張感などは微塵もなく、みんな顔見知りのようで、和気あいあいとしていた。面接を待つ間、結構広めな年齢幅の男女がくだらない会話をして時間を潰している。もちろん僕はその中に知り合いはいないので、一人で席に座り、居心地悪さを眉間の皺に示威させていた。
次々とグループごとに面接室へ消えて行く。僕の順番は多分最後だ。イライラしながら、窓の外に移る上野の景色を眺めていた。突然、ドランクドラゴンの塚地がやってきて「順番、次、君らやから」と言い放たれた。
グループ面接は、僕を含めて3人だった。いずれも神経質そうな眼鏡の男子で、僕の目の前で2人とも地図を使った作品のデモンストレーションをした。3人の面接官はどれも興味深気に眺め、笑顔で彼等を送りだした。さて、いよいよ僕の番か、という時に、面接官らは席を立ち「ちょっと待っていてください。面接官交代します。」と部屋を出て行った。入れ代わりにまたドランクドラゴンの塚地が顔をのぞかせ「がんばれよ」と言った。余計なお世話だ。
実は先程2人の受験生がやった地図のデモンストレーションが気にかかっていた。やり方は全く違うとはいえ、地図や地理を主軸に作品展開をするのが、僕の芸術論のひとつだったからだ。お決まりの質問である「この大学に入ったら何がしたいですか?」には、そのことを答えようと思っていた。しかし、僕は今地図を持っていない。彼等のようにデモンストレーションをすることができない。もっとも、デモンストレーションは、各自出願の時点でするかしないかを決めることができ、もちろんデモンストレーション無しの選択肢でも構わないものだった。1次試験と2次試験の面接の間には時間が僅かしか無く、特にこれいって何も用意していなかった僕は、デモンストレーション無しで挑んだわけだが、今になってこの選択を悔やむことになるとは、、、 ん? この選択? というか、デモンストレーション無しを選ぶつもりだったけど、デモンストレーション無しの選択をした覚えはない、、 というか、出願時にデモンストレーションの有無を選択していない、、、 よくよく思い出してみると、2次試験の面接は出願をしていない! 僕の頭はパニックに陥り、あわてて鞄の中の受験票を探してみたが、2次試験の受験票は見当たらない!
そんなあたふたしている僕を尻目に、新しい面接官が入ってきた。ひょろりとした50代ぐらいの男性と、60後半とも思える、総白髪の気品溢れる女性だった。取り乱している僕に確認をとるかのごとく、ゆっくりとした口調で彼女は喋りはじめた「あなたが1次試験を合格されたことは存じています。でも、今日中にあなたの身分証明が取れなければ、今日の面接は無効になってしまうの。」僕はもう口の中が泡だらけでそれこそ「あわあわ」などとマンガなことを口走ってしまいそうになった。彼女はそれでもまだ畳み掛けようとする。「さて、どうしましょうかねえ?」
日は既に傾き、上野の空は橙色に染まりつつある。「どうしよう どうしよう どうしよう」
ていうような夢を観た。